2007年11月16日金曜日

創造学のすすめ

著者名 ;畑村洋太郎 発行年(西暦);2003 出版社;講談社
 もともと工学部の設計にたずさわる著者は「失敗学のすすめ」でベストセラーとなり、その名をしらしめた。そのころから若干気になる著作物が多く、新刊が出るたびに種々の本を一応読んでいた。とはいえ、「失敗」から「学習」するというのは、オカルトビジネス本の類でも、よく述べられているところであり、いまひとつ実感としてイメージが伝わってこなかった。とはいえ、逆演算的に失敗から「創造」ではなく、順演算的に「創造」をつかみとっていこうというこの本ではある程度畑村氏のいわんとするところがつかめてきたような気がする。とはいえ設計の立場からみた創造であり、ある程度、クリエイティブな仕事にたずさわった人間には「なるほど」ということになるのかもしれないが、営業・経理といったビジネス分野では、まだ応用できる部分が少ない本ではある。
 とはいえ、「要素や構造の組み合わせによって新しい機能を果たすものであること」と創造を定義し、要素や構造の学習をとおして創造へ向かうそのスタイルには好感がもてる。いわゆる天才肌の人間には暗黙的な知識はあれど、形式的にそれを凡人が学習することができなかった。この本では天才の学習や創造のプロセスを学習できるのだからすばらしいといえる。とはいえ難易度が高く、いっけんただの読みやすいビジネス本にみて実は手ごわい。用心しながらもう一度よみかえしてみたい本である。
 
 特に「仮想演習」という項目が興味深い。できあがった脈絡をシミュレーションによってたどりながら、全体の脈絡を正すプロセスというように定義され、これって問題演習で概念や知識の整理をするのと非常によく似ているなあ、などとも思う。また仮想演習によって環境の変化に対する別のシミュレーションも想定できるようになるという指摘も非常に有益だと思う。

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