2007年11月16日金曜日

オルフェウスの窓⑧~⑨

著者名 ;池田理代子 発行年(西暦);1996 出版社;集英社
 最後はおそらく主人公たちは30歳を越えているはず。ボルシェビキが暫定政府を倒して史上初の社会主義政権がうまれると同時に、ユリウスは南ドイツに戻り、失われた記憶に苦しんだ挙句、川に流される。まるでオルフェウスのように…。イザークは指を痛めてピアノは弾けなくなっているが、作曲をし、息子をバックハウスに預ける…。ほろ苦さとかつての少年時代を懐古してラストが飾られるわけだが、最初の夢と希望にあふれた音楽院時代と比較するとまるで別の物語のようなくらい、しかし未来に託す何かがある物語ではある。ロシア革命とドイツ統合といった伝統あるいは職人という存在がまだ残存していた地域にもちこまれた市場経済が急速な変化で人々を変化させていきつつも、音楽へのこだわりだけはだれしもがなくさなかった。今21世紀になってあらためて読み直してみて、これは19世紀と20世紀の物語であると同時にさらに21世紀にも進行している継続性のある物語だったのだ、とも気づく。

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