2007年11月16日金曜日

オルフェウスの窓⑥~⑦

著者名;池田理代子 発行年(西暦);1996 出版社;集英社文庫
 第一次ロシア革命が失敗に終わりを告げ、貴族出身のクラウスはメンシェビキからボルシェビキへと活動の場所を移す。いったんはシベリア流刑になるも再び脱獄して、モスクワに戻ってくる。そして海外に亡命していたレーニンなどの活動家もロシアに戻ってきた。一方ラスプーチンも暗殺され、ニコライ2世は退位する。そして暫定政府が樹立されたが、さらにロシア内部では、争いが続く。同じころドイツでも反戦運動が巻き起こりウィルヘルム2世は海外へ脱出。ニコライ2世が捕らわれた3月革命ののち樹立された臨時政府が第一次世界大戦の継続を表明したため民衆は失望。首相のケレンスキーはそれでもたくみに権力のトップの座につくも、クラウスと記憶を失ったユリウスは再会。そしてユリウスはクラウスとの間で契りを結び懐胎するが…。
 ひたすら暗くそしてシベリア流刑の様子は精神の安定を欠いた囚人や看守にオモチャにされる女囚人などの様子も残酷に描き出す。これでもかこれでもかといわんばかりのロシアを舞台にした、あるいはクラウスとユリウスを中心にした物語は、ドイツ以上に資本主義体制や社会体制が未整備だったロシアに共産主義や労働運動が急速に浸透し、反皇帝主義と強く結びついていった様子がわかる。ただしどれもが窮屈なイデオロギーに縛られているため、フランス革命のときよりも登場人物の顔はどの立場であっても暗く重い。…この作品を書いたころの池田理代子氏はおそらく30代前半。どうしてここまで見事な作品をその年齢でつむぎだすことができたのだろうとおもえるほど、その筆は残酷なまでに大きな歴史の中で揺れる三人の若者の「愛」が描かれる…

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