2007年11月17日土曜日

ねじ式・紅い花

著者名;つげ義春  発行年(西暦);1991 出版社;小学館
 自分自身に何か誇りとかプライドとかがある人間にとっては「つげ義春」の漫画は毒薬のようなものだ。核心にはまったくふれない周辺だけをめぐる会話や日常的な生活の中に突然あらわれるヤクザの刺青や不倫や会社倒産、貧困といったものがスルスルと描写され、そして「ため息」や「無言」といった漫画では想像できない技法や最後には粗筋すら存在しないゲンセンカン主人やねじ式といった歴史的名作がここに今もある。
 文鳥を殺して悲しむバーの女とそれをみつめる男の冷ややかなまなざし。人間の残酷さというか暗黒面と、そしてそれを忌避するギリギリの倫理観のようなもの。そんなものがすべて揃っている。確かにつげ義春は天才だ。ずっとこれからも。

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