2007年11月17日土曜日

物語 イギリス人

著者名;小林章夫 発行年(西暦);1999 出版社;文藝春秋
 イギリスという言葉が4つ(ないしは5つ)の地域あるいは国家を総称するものとして、ステレオタイプな英国人象を徹底的に「楽しむ」本である。ジョン・ブルについてももちろん章がさかれているが、個人的に一番興味深いのは、インド帰りの大富豪ネイボッブとよばれる新興成金階級の章でネイボッブの有名な人物としてトマス・ピットがいる(親子二代にわたって首相を出すピット家)。それから18世紀前半に英国を統治したウォルポール。1714年にジョージ1世がイギリス国王に即位するとウィッグ与党体制が固まっていく。その最中、英国では南海泡沫事件が発生。株価が急上昇下の地に急落するバブル経済のさきがけとされる場面にウィルポールはたちあう。ここにきてジョージ1世は意欲をなくし、ウォルポールが首相として、責任内閣制の担当者としてこの事件の後始末を始める。このとき、南海会社が引き受けていた国債を株式に転換させて半年ほどでこのバブル崩壊を鎮圧。さらに「国富」を増加させるために、戦争回避の外交をつらぬく。スペイン継承戦争などいろいろな事件はあったが、大英帝国は商人国家をめざす。ナポレオンはそうした英国を称して「商人の国」といったが、その承認の国が最終的にはナポレオンを破り大英帝国として栄えていくのだから、このウォルポールの穏健な現実主義路線、戦争回避路線(もっともそのためには一種の買収工作なども辞さない面はあったらしいが)を貫く。ウォルポールの息子は父親を称して「偉大なる庶民」(ホレス)といったらしいが、なんとなく英国人の政治家の一つの断面をみるようだ。

0 件のコメント: