2007年11月17日土曜日

いまを生きるための歎異抄入門

著者名 ;佐々木正 発行年(西暦);2001 出版社;平凡社
 法然という人の弟子が親鸞にあたり、この二人がいわゆる「専修念仏」という新しい形態の仏教を始めた。おそらく当時としては新興宗教の部類に入るのだろうが、特段に出家することなく魂の平安を必要とする人には、やはり必要な宗教改革だったといえるのかもしれない。もちろん曲解して当時の「東の国」では悪者であればあるほど救済されるなどという当時の「混乱」も紹介されていたりする。もともと貴族の出だった親鸞が正統派である当時の仏教でのエリートの座をすて、仏教徒でありながら当時禁制とされていた結婚にふみきり流罪となり、それでもなお求めていたものはいわゆるエリートとしての救済ではなく、エリートになれないが苦しんでいる庶民のための仏教という発想ではなかったかと類推される。キューブラー・ロスや「夜と霧」などの引用や解釈もなされるのだが、そうした筆者の解釈はちょっと私とは相容れないものが一部あるものの仏教という世界が日本社会や経済社会の中ではたす、あるいははたしてきた役割について考える時間をくれた一冊といえる。かなり歎異抄からも引用がされているが現代文の翻訳もついているので読みやすいことは読みやすい。

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