2007年11月15日木曜日

和田式現役合格バイブル~受験生活編~

著者名;和田秀樹 発行年(西暦);2001 出版社;学習研究社
本書は主に大学受験生をターゲットとしたもの。名門私立灘高等学校から東京大学医学部卒業後、博士号を取得。老人精神学、教育学など種々の分野で論陣をはる。「朝まで生テレビ」などのテレビ出演も多い。
 おそらくこの極端な実用性志向については、ある種の人々には相性があわないものとも思える。しかし、実用性もしくは結果重視スタイルの人間には、大学受験突破スキル以上に得るものが多い本である。もともと日本の教育は「実学」重視で明治維新以降、制度化されてきたはず。それは江戸時代の儒学などの学問より「実」のあるもの、つまりは将来キャッシュ・フローに結実する教育を重視しようとする学制である。主に福沢諭吉がその路線をひいたはずだ。にもかかわらず1950年代以降、社会民主主義と日本の教育は不幸な結びつきをする。「平等」という神話であるが、実際の生活では「競争」「差別」「区別」「所得階層」といった種々の「差異」はいたるところでみられる。フェミニズムもそうした「性差別」にひとつの端を発しているといっても異論はないように思う。
 その中で、受験戦争肯定の立場にたつ和田先生は「親や教師の受験観にサヨナラを」と訴える。ことごとく同感である。
 現在文部科学省は「ゆとり教育」を実施しているが、OECDの学力検査や国内での学力検査で数学・理科系統の知識がかなり低下していることが数値として確認されている。さらには、公立高校・中学校がかつて「名門」として機能していた時代は終わりをつげつつあり、10数年前には問題にもならなかった高校は進学実績をあげている。
 「学歴無用」という企業が一見多いが、実質はいやらしいことに異なる。現にリベラルで売っている何某新聞社は公的な会社説明会とは別に、かつてはブランド大学の4年生に接待つきのリクルートを行っていたし、金融機関でもほぼそれは同様であろう。学歴は絶対条件ではないが、現実にはある程度の大学をでていなければスタートラインにもたてないケースはあるのだ。
 こうした現実をみるかぎり、たとえある種の分野(特に現実離れした平等論者や理想論者)の人々がどうあろうと、それなりの知識や自己の歴史はちゃんと確立しておくべきだ。高校生もしくは受験生のみならず社会人にとっても示唆に富む実用書である。

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