2007年11月4日日曜日

現代社会論~五つの思想の系譜~

著者名;奥井智之 発行年(西暦);1995 出版社;中央公論新社
「すべての歴史は現代史である」(クローチェ)という言葉を引用しつつ「すべての社会科学は現代社会論である」というスタンスで、その現代社会論を過去と現在(過去への郷愁としての現代社会論と未来への空想としての現代社会論)との大別の観点で、①帝国主義論②大衆社会論③産業社会論④管理社会論⑤消費社会論と5つの思想の系譜で合計60冊の「伝統的」な現代社会論の名著を批判的に紹介する。
帝国主義論というとやや抵抗というかいまどきという感もするのだが本来情報社会論とするべきところを意図的に帝国主義論として、現代社会論が「現代」といいつつ、社会そのものが流動的に変化し続けていることとの矛盾を指摘している。帝国主義論で紹介されているのだがコンラッドの「闇の奥」、ホブソン、レーニン、幸徳秋水、カウツキー、ヒルファーディングといった面々。②の大衆社会論では、オルテガ、プラトン、トックヴィル、リースマン、③の産業社会論ではウェーバー、シュンペーター、アルビン・トフラー、④の管理社会論ではマルクス、ラスキン、ハックスリー、オーウェル、ハイエク、そして最後の情報社会論でカイヨワ、ヂュルケーム、バタイユ、ホイジンガ…と過去の思想を系譜として紹介しつつも、新たな可能性を模索する。現代社会論としてのブックガイドとしてももちろん読めるのだが現代社会論への批判としても読める本で非常にハンディで個人的には良い。ヒルファーディングの金融資本論なんて多分今では誰も読まないだろうし、こうした本で一種の「総括」をしてくれるのは有難い。
 過去への郷愁というよりも過去との決別、未来への空想というよりも未来への批判的希望という感じだろうか。イントロダクションとしての書籍ではなく、新たな学者を育てようという筆者の意気込みも感じられる新書サイズの良書。

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