2007年11月15日木曜日

座右のゲーテ

著者名;斉藤孝  発行年(西暦);2004 出版社;光文社新書
斉藤孝氏の本はいわゆるノウハウ本のように結論を簡単に出さない。ゲーテの言葉を斉藤孝氏なりに解釈したテーゼが並ぶのだが、それもまたいたるところで矛盾をはらむものとなっている。それがまた「斉藤本」の魅力なのであるが。
 わずか2ヶ月で5刷であるから相当売れているし。この本をきっかけにしてゲーテに接する世代もでてくるのかもしれない。「若きウェルテルの悩み」は中学1年生のときに私は読んだが、現世代でそんな人はいないであろう。
 「実際に応用したものしか残らない」というテーゼはきわめて正しい。かなり多くの本を自分自身読んでいるつもりだが、その中で現在の自分に残っているものといえば、自分自身で工夫して活用したものだけである。人間は自分自身を「編集」するのではなく、他の世界を編集するようでなければならない。幾分かの矛盾をはらみつつそれでもなお一般教養と専門知識の獲得へのあくなき挑戦は続く。
   
 「テキスト」という言葉について「そこから意味を引き出す素材」として定義しているのが興味深い。興味関心が喚起される素材と考えれば、確かにいろいろな基本テキストをそのまま内容を受け売りするのではなくて、むしろそこからどうやって「意味」を引き出していくのか、といった創意工夫が必要になる。どうってことない一色の教科書からさまざまな意味や解釈をひもとく…といった作業までも実は書籍は可能にしてくれるツールなのだと読んでそう思った。

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