2007年11月16日金曜日

精神科医は何をしてくれるか

著者名;安藤春彦 発行年(西暦);1996 出版社;講談社ブルーバックス
 臨床心理士などがまだ国家資格となっていない時代の話で、しかもまだ一定の偏見が残っていたころの話である。人間の行動原理や病気の説明が主で、大きな原因はやはり「素因」とよばれる気質的なものにゆだねられ、哀しい出来事などは一種のキッカケにすぎないとする。つまり映画などではまりにもドラマチックなことが発生した場合に登場人物が平常な心因反応を失う演出があるが、実際には、そうした「異常な心因反応」を示すのはある程度もともと別の素因があったものと考えるべきなのだろう。
 決して指示を出さずまず「共感」を示す…といった点で、かなりこれまでの印象をくつがえす内容となっているが、発行されてから9年。さらに時代や病気に対する研究も進んでいるに違いないという印象をもった。
 また同じ出来事であっても正常な心因反応を示すケースと異常な心因反応を示すケースがあるという紹介については「夜と霧」で、早くに絶望してしまう人とそうでない人との差異を思わせて興味深い。

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