2007年10月8日月曜日

極道放浪記②

著者名;浅田次郎 発行年(西暦);1995 出版社;ワニブックス
 思えば10年前に購入したこの本は自分のバイブルのようなものでもあるようだ。当時「企業舎弟」だった直木賞受賞作家浅田次郎氏の際どい生活が笑いをまじえて紹介されているわけだが、「刑法」の「起訴便宜主義」の解釈などは刑法の専門書籍を読むよりも実践的だ。さらに当時の警察署留置場見取り図なども収録されており(今では大分改善されたとの話もあるが)、詐欺の手口から整理屋(サルベージ)の手口まで本当に細かいところまでよく考えられた「生活」だ。
 とはいえ別の書籍で明らかにされているように筆者はその「悪行」の生活のさなかにも机の前に座って小説の練習を怠りなく重ねていたようだ。座っていた場所がくぼんでいたというから、名作の筆写も含めて相当に文章の練習をされたらしい。すべてが綿密な努力と鍛錬による、というゆるぎない自信がこの本にはあふれているが、苦労と忍耐の中で蓄積された生活の知恵と才能を感じ取ることができる。「自由の中の自己管理こそが真の束縛」といった明確な定義づけも筆者の「自己管理」の厳しさを想像せしむる一節ではなかろうか。

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