2007年10月9日火曜日

石の花①~侵攻編~

著者名 ;坂口尚 発行年(西暦);1996 出版社;講談社漫画文庫
 読んでいて非常に辛くなる漫画なのだが、それでもやはり夏のこの時期には…。巻頭の言葉として「いろどる千の葉が夏をおりなすこの星にて」と始まるこの漫画は、1941年スロベニア地方のとある農村から話が始まる。すでにドイツ、イタリア、日本が三国軍事同盟を結び、ポーランド、デンマーク、ノルウェー、オランダ、ベルギーが陥落。ブルガリア、ルーマニア、ハンガリーは三国軍事同盟に参加していたという状況だった。14歳のクリロとフィーは平和な中学生生活を満喫していたが。、ある日突然ドイツ軍の急襲を受け、ユーゴスラビアはナチス・ドイツ、イタリアなどの占領下に置かれる。5つの民族と4つの言語、3つの宗教と2つの文字が混在する寄り合い所帯のユーゴスラビアでは、どうしても一致団結して戦うという雰囲気がなく、セルビア人偏重だった旧体制に不満だったクロアチア人の多くはナチスドイツの組んでウスタシとよばれる独自の特殊部隊で反ナチス分子を弾圧・摘発しはじめる…。そんな中チトーがパルチザン部隊の組織化を始める…。
 終始暗いトーンの中でクリロ(翼)は「現実をのみこむ」ことをせずに終始疑問をナチスにもユーゴスラビアにもなげつける。天才坂口尚は、ユーゴのゲリラ部隊の中の女性蔑視やユダヤ人蔑視などのエピソードを取り入れ、「力」の論理を徹底的にこの第1巻で描写していく…。

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