2007年10月1日月曜日

日本語トーク術

著者名 ;斉藤孝・古舘伊知郎 発行年(西暦);2005 出版社;小学館
 一種の「会話」や作品などをこれから「創造」していこうとする場合のヒントが凝縮された対話集。本来あるべきものを一定の個性でずらしていくとオリジナルのものができあがったり、そこに一貫性があるとスタイルがうまれてくるというのは日々実感しているところ。さらにその「ずらし」の基礎に普遍的な常識が横たわる(たとえば言葉でいえば近代文学を作った夏目漱石など)ので一定の常識を学習していく必要性があるという二人の意見にも賛成。斉藤孝氏はこれまで「技」「身体性」というキーワードを多用してきた人だがここで「考えなくても即座に技がでるようにすることが身体性」という明確な定義を下してくれているのも嬉しい。個性を獲得するのであれば、自分自身にないものをどんどん取り入れて自我を拡張していくべきという方向性にも賛成。
 さらに話は一種のコミュニケーション論にも展開して、スタイルをはずすことによる「調和」、コミュニケーションととるまえに江戸前のお寿司みたいに一度仕事をしてからネタを出す、コミュニケーションは脳を混ぜ合わせる快感、練るというしつこい作業、集団とコミュニケーションの中で1つのものを作っていく快感、他者を言葉と言う形で自分の中に受け入れることが「読書」といった「脳みそ」をまぜあわせるコミュニケーション論もいろいろはっとする指摘がいっぱい。「ずらし」でいえば、「モノマネといえば洗練されればされるほど似なくなってくる」という指摘も何かを創造するときの重要なヒントになる。

 忙しすぎるという場合には「追い込まれて時間がないか考える間がないときにいい仕事ができる」という台詞が重い。物まねからまねる、盗むという工程をへて自分のスタイルを作り出していくという流れは何かを「作る」ときにすごくいい指摘だと思う。まねる対象も1つだけでなく3つにしろ、とか短編をたくさん作って長編にする、ロングセラーは密度が高くないともたない、知識と体験は両立可能など知識と体験の日々を送る二人が贈る一種の仕事の「ワザ」の紹介といえるだろうか。内容はかなり濃いと思う。

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