2007年11月4日日曜日

働く気持ちに火をつける

著者名;斉藤孝 発行年(西暦);2005 出版社;文藝春秋
 「身体感覚」っていうものを非常に重視して「労働」を把握、解説している本だ。リズムとかテンポといった観点で仕事を考えるというのは自分自身では思ってもみなかったことだが、それにしても「ミッション」「パッション」「ハイテンション」というすでに副題からして「韻」を踏んでいるわけだから、リズム感というのは確かに重要かもしれない。宮沢賢治の「よだかの星」を題材に不愉快な経験をパワーに変える…という普通の人が書くとやや気恥ずかしくなるようなテーマであっても、よだかがなぜ地上に落下する寸前にカシオペアの横に輝く星になったのかを解説してくれているのだが、こうしたロマンをビジネス書籍に活用できるのも筆者の一種の「才能」だろう。
「絶望的と思われるときでも、もう自分には何の力も残っていないと思えるときにも、人には必ず反転する力がある。そんなときにこそ炸裂する力というものもある」
というくだりは、確かにこれまでを振り返ってみて「もうだめだ」と思っていてもその後活路を開くことができた場面を想起すると「なにがしか」の反転する力なるものの存在に「気がつかざるをえなくなる」。メンタリティの習得という「コンディション」の整え方まで「技」として伝授・コミュニケーションしようという立場が好ましい。独善的な姿勢は伝達不可能だし、思想というのも結局は伝達は難しい。しかし技術であればこそ他の人には伝授できるという実利的な発想は、仕事というものを理解するには必須かもしれない。「不愉快な感情をふつふつと醸成」などというおどろおどろしくも、ロマンの響きが残っているのはおそらく筆者が大学生を教える立場にあるからかもしれない。つまり心が若いのだと思う。簡単そうにみえて実現できない「技術」を21世紀の日本で宮沢賢治を題材に教えられる教師というのは探してみてもそうはいない。その授業をこの本で「読める」のだから、読書って本当にありがたいものだとあらためて思う。

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