同様の趣旨の「質問力」「段取り力」(筑摩書房)が「生きる力」の3つの柱のうち2つを取り扱っていたのに対して、この本は人間を見抜く座標軸みたいなものを表示している。
もっとも人間性をみぬくとはいっても最終的にはなんらかの形で数量化されるのが社会の原則だ。入学選考等でも資格、技能といったものが一つの指標となるのは、もっていない人間よりももっている人間の方が客観的に測定可能という理由がある。もともと斉藤孝氏の本では座標軸がよく用いられているが、実はこれには個人的には抵抗感があった。しかし、単純な二分割思考では(善と悪など)、発展性がないのに対して、とにかく四次元に分割して物事を考え、ときには座標軸そのものを入れ替えるという作業をすればいわゆる「知的複眼思考」がある程度わかりやすく行える。多少時間はかかるが試行錯誤のプロセスがわかる点でマッピングというアナログな手法も肯定せざるをえない。したがってこの本では実用性はどれだけ本の内容を活用できるか、読者の力量にかかっているともいえる。
仕事の能力を「掃除」「買い物」とった尺度で測定する業界や会社も紹介されているが、そこには一種の客観性があるわけだから、それはそれで納得がゆく。要は納得できない選考手法をとっている組織体が問題なのだろう。(たとえば早稲田大学は広末なるタレントの何をもってして教育学部に迎えたのか。またその選考理由に指標なり責任なりがあったのなら、中途退学した結果に対して大学内部の誰が責任をとるのか、ぜんぜんみえてこない。こうした不透明さが早稲田ブランドを下げる要因になること自体は認識しておくべきだろう)
眼力とは情報収集能力にもつながる。応用可能という点で実にこの本が1200円で入手でっきるというのは、すばらしいことだ。
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