2007年11月11日日曜日

簿記会計の研究(中央経済社)

商法制度会計論の執筆者だけあって,商法制度の観点から保守主義や財産目録の復活といった論点を取り扱う。帳簿記入を無視した簿記はありえないというスタンスも回顧的だが,ユニークだ(昔は通説だったかもしれない。しかし情報量や事務処理の煩雑さが拡大しており,実務にこだわるのであれば帳簿組織が電磁システムでなければ簿記会計は成立しない時代であることも事実だろう)。
 日本債権信用銀行が実質国有化されたのは,平成10年。商法,破産法といった当時の法制度の観点から「債務超過」という現象を分析する。「財産をもって債務を完済することができない状態」という金融監督庁の判断,そして会社が清算段階になったとき取締役は清算人となって清算手続きを遂行するが清算中に会社の債務超過が明らかになれば清算人はただちに破産宣告の手続きにはいらなければならない(商法430条,民法81条)。ゴーイングコンサーンに疑義が生じた場合には,時価ベースの財務諸表の公表ももとめるべきではないか…といった論調だが,最初から(通常時から)時価主義を採用していれば債務超過がそうでないかは明白だろうと考えられる。時価主義の採用であれば実質債務超過…といった報道ではなく,財務諸表から利用者はそれを判断できるという考え方もあるだろう。とはいえ,種々の異論はあれど商法会計の立場やアプローチを理解するにはいい本かもしれない。個人的にはちょっと…という感じでもあるが…。

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