2007年11月4日日曜日

いちばん大事なこと

著者名;養老猛司 発行年(西暦);2003 出版社;集英社
 「虫」という観点からあらためてローマ帝国からはじまる森の滅亡を読み解き、「虫」を通して部分分解主義となっている科学や行政のあり方を批判する。「あとがき」では「立て続けに同じ著者の本が売れるわけがない」と書いているが、生態系のあり方は「こうすればああなる」的な因果論では説明できないものという立場で学者のあり方なども含めて論じた本になっている。「バカの壁」は以前読んで「なぜこれが売れるのか」について実はぜんぜんわからなかった。内容について「支離滅裂では」と個人的には思っていたのだが、この本はわりとすんなり内容に入っていける。多様性ということを考えていけば、やはり「部分的な論理」で全体を論じるととんでもないことが起こる(…たとえば大雑把に人類を資本家と労働者階級に二分化することなど)は歴史的にも証明済み。安易な原因と結論探しですべてを終了させることに異論を唱えている本だといえるかもしれない。「かも」というのは断定することのリスクを著者がとなえていることに配慮しているにすぎないが。
 安易な結論と安易な状況分析は事態をかえって悪化させる。新聞記事の論調に「本当か?」と疑問を感じることが多い今だからこそウェブの意見の多様性は自然の生態にも似たものを感じる。

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