2007年10月1日月曜日

ローズガーデン

著者名;桐野夏生  発行年(西暦);2003 出版社;講談社
 どうしても気になる作家…となると日本の場合、この桐野夏生氏。現実にありそうでなさそうな微妙な陰影を掬い取るのがやはりうまい作家だと思う。終始たちこめている暗いイメージとこのタイトルのミスマッチが面白い。
 探偵ミロの高校生時代を描いた「ローズガーデン」、悪意に満ちたマンションを描く「漂う魂」、奇妙な中国人ホステスと家庭をもつ男性の愛を描く「独りにしないで」、突然死した女子大生の暗い別の顔「愛のトンネル」。いずれもミステリーというにはやや結末が淡白なのだが、裏読みすれば別の粗筋がうかびあがるという構造。文脈を探ってみると実はラストの表の文章とは別のラストを読者が想像できるように仕組まれたミステリー。「あっけなさ」と「不気味さ」が混在するこの桐野ワールド…やっぱり魅力的だ。

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