現代のビジネスパーソンにとって必須のスキルとは,英語・パソコンそして会計といわれる。特にコンサルタント業界ではそうらしい。情報処理についてはデジタルデバイドといわれるが,伊藤邦雄は会計学に関する知識の過不足で生じる待遇などの差異をアカウンティングデバイスとよぶ。2003年末に発行された本ですでに第4版だが,この時点でだいぶ内容が古びてきているのがわかる。企業結合会計・減損会計はすでに公表され,ストックオプション会計も企業会計基準委員会報告書1号が公表されている。業績報告書にする会計規定もこれから整備されることだろう。
特別目的事業体なるペーパーカンパニーを利用した債権譲渡は日本でもだいぶみられるようになってきた。エンロンといえば粉飾決算で大事件を引き起こしたが,この特別目的事業体を使って簿外取引を隠蔽し,2度にわたる粉飾決算を公表した。かくして2001年12月にアメリカ証券取引委員会,ムーディーズの投資不適格といった事態を受けて,連邦破産法の適用を申請する。アメリカはこの事件の後にFASBの改
正作業にはっていると聞いている。アメリカの会計基準はとかく細かいが,その細かさが逆に明瞭性を損なうことになったのかもしれない。1999年6月以降,日本の会計基準で作成した財務諸表には警告(レジェンド)が付されることになった。このきっかけは1997年の山一證券の破綻にあったといえる。
国際会計基準はIASCからIASBに組織変革され,先進諸国からリエゾンメンバーを選んで,会計基準の世界標準化を進めることとなった。日本でも財務会計基準機構がデユープロセスを公表しながらの会計基準を作成するようになり,だいぶ公平性が担保されるようになってきたという印象が強い。
国際会計基準のリエゾンメンバーには英米からアメリカ,イギリス,カナダ,オーストラリア,そして大陸法系等の国からドイツ,フランスそして日本が選出されている。この本では膨大なケーススタディと説明でもって会計のダイナミクスを描こうとしており,さらにこれからも改訂作業におわれることになるだろう。改訂バージョンごとに購入するにはつらいが,それでも最低限の会計学の論理や会計処理はマスターしておいて,ソンはない。
財務データが企業の「鏡」として機能していく上で,利用者である消費者・生活者・投資家はそれなりの情報分析能力を身につけておく必要性がある。ちょっと一橋大学の先生らしからぬアプローチではあるが,お勧めの一冊である(ただし入門書としては不適である。かなり高度な内容を含んでいる)。
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