2007年12月21日金曜日

週末起業チュートリアル

著者名 ;藤井孝一  発行年(西暦);2004 出版社;筑摩書房
 元金融機関の社員で中小企業診断士の資格をもつ経営コンサルタントの週末起業の話。いわゆるサラリーマンを4つの種類に分類した上でまず週末熱中型のサラリーマンをめざし、その後、週末企業型サラリーマンへの段階的進化をとく。これはある意味ではかなり現実的な書籍であり金銭面においても優れた洞察力がある。資格取得にはなんの意味も無いと書いているが逆に中小企業診断士程度の資格ももっていない経営コンサルタントなど需要がほとんどないであろう。やはり学歴や資格は、「こけおどし」であっても保有していたほうがしていないほうより有利である。
 昨今の企業家ブームと一線を画している点は固定費や初期投資などの計算や概念をちゃんと提示している点である。金銭面の感覚やリスクを認識していない企業家ブームは危険ですらある。しっかり本業で稼ぎながら、週末にそれなりのスキルアップをはかるという方向性は間違いではあるまい。
 情報産業が固定費がいらない点で参入しやすいが、しかし情報産業で新しい機軸を生み出すのは至難の業でもある。ウェブなどは無数にできあがっている上にこれで有料制にしても無料の良質なサイトと競合するのはかなり無謀だ。コンサルタント業も固定費はいらないが(一見は)、経営が軌道にのるまでの無形の投資額はそれなりのものだろう。
 人脈の形成について「名刺の交換」は意味が無い‥「一緒に仕事をする」という指摘も納得がいく。いたずらに広範囲に人間関係を拡大しても年賀状の数ばかりが増加して結局のところ何の将来キャッシュ・フローにも結合しないケースが多い。やはり人間関係は量ではなく質でありそうした点についても言及されているのは評価できる。
 しかしこうした新書本だけ読んで実際に起業しようなどと考えるのも甘いのであってやはり地道な努力でチャンスがきたならばいつでもつかまえることができるように準備しておくのが当面のサラリーマンのありかただろう。海外勤務や大学院ばかりがキャリアアップの場所ではない。今いるここでどれだけ最大限に備えられている資源を活用できるかがポイントである。制約のある中で、最大限の活用ができない人間には、やはり、世間は冷たい。

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