2007年12月21日金曜日

地図はこんなに面白い  

著者名;ハイパープレス 発行年(西暦);1999  出版社;PHP研究所
 地図がプロパガンダに用いられた話、中世暗黒時代(アリストテレス哲学と神学が奇妙に合体した時代)に本来あるべき地図が「歪曲」されていた時代の紹介など文庫本にしてはもりだくさんな内容。古代ギリシアやローマ時代の地図はわりと科学的観点から作成されていたようだが、エラストテネスやプトレマイオスの業績は、ほかの科学的発見と同様にアラブのイスラム教世界に継承されていた。9世紀にプトレマイオスの天文学の業績がアッバース朝でアラビア語に翻訳され、イスラム地理学が胎動しはじめる。アル・フワリズミがあらためて地球を測定しなおしたりするなど、この時代のイスラム圏での業績はやはり再評価されてしかるべきである。中世キリスト教世界がうみだしたTO図(マッパ・ムンディ)は宗教的世界そのものであり、宗教的必然性から奇妙なものが書き込まれたものとなっている。その紹介もちゃんと掲載されている。16世紀にメルカトルが地図上の角度を正しく測定するメルカトル図法を考案。海難事故の防止に役立つ。ただしメルカトル図法の面積は歪曲されているので、南極・北極にちかくなればなるほど面積は広くなる。これをアメリカは利用し、ソビエト連邦を実際よりも大きく表示したこの地図で共産主義の脅威を訴える。現在GISとよばれるデジタル技術で土地開発や分析などが行われているが、これはまたハンバーガーショップの出店計画などにも利用されている。15世紀後半じゃら17世紀初頭までのヨーロッパにいきた探検家の紹介(地図の測定に貢献)など地図にまつわる雑学が紹介されている。ただし後半若干ネタ切れの様相も呈しているが、この種類の文庫本にしては面白い。入門書として利用すべきものなのだろう。巻末に専門文献の一覧が掲載されており、これを利用していくのが正しい方法であるともいえる。「東京の都市計画」(岩波書店)や「世界図の歴史」(平凡社)といったあたりが注目か。

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