2007年12月21日金曜日

SEの生態

著者名;きみたりゅうじ 発行年(西暦);2003 出版社;技術評論社
 もともと編集業を生業とするものにとって、一番の悩みの種は「売れる本」を作り上げるテクニックが確立されていないということにつきる。ジャンルは違えど、経済関係・実用書・純文学・写真雑誌すべての編集者が同じ悩みを抱えているのではないか。写真集も一時は隆盛をほこったものの最近ではよほどのことがないかぎり書店では平積みにすらならない。ブックオフでは写真集を1冊300円にしていたが、それでも買っている人はいなかった‥。そうした自分にとって最近の興味はSEという人たちとの業務内容の共通性である。しかしシステムエンジニアリングは、その実行計画も含めてかなりの部分がスキルとして確立されている。そうした技法を何とか自分の仕事に取り込めないものかと模索している中でであった一冊である。
 ①企業のシステム開発の最初の工程はクライアントの「要求定義」に始まるが、筆者は要求定義を「できることとできないことの明確化」と一刀両断する。確かにクレームや要望はいかなる仕事にもあれど、「できないこと」についてはどうしようもない。
 ②あらゆるソフトウェアには常にバグがあり、だからこそ安定したソフトウェアを開発するには、旧技術も活用すること(編集でもなんでもかんでもデジタル化すればいいというわけでもない。写植技術という旧式技術の印刷の美しさはレーザプリンタなどではだせない)
 ③「設計の上流工程を無視した製造はありえない」‥編集の上流工程でもある企画がぼそぼそだといかにお金をかけても売れない(はず)。
 ④「システム開発は業務改善のスペシャリスト」(編集も一応、日本語のスペシャリストとかおもわれがちだがぜんぜんそんなことはない。しかし担当している本の種々の状況はSEと同様に最低限把握しておくべきだろう)
 ⑤「肩書きによって相手を信用するのではなく、自らの目で相手を測ること」(ああああ、これは編集も同様。肩書きは立派でも原稿はぐずぐずってなことは山ほどある)
 種々の格言・名言の中で筆者の心意気は次の文章にあるだろう。「限られた時間内で最大限の満足度を与えるシステムをバグなしで提供して利益をあげる」。結局のところお客様あってのシステム、お客様あっての書籍‥。相手を無視した商品はやはり提供したところで自分自身の満足もなければ利益もあがらない。デジタルもアナログもその点はベースとして共通しているものだと思う。実用度は最高。システム開発やプロジェクト管理といった言葉も読み進めていくうちに理解できるような配慮がなされている。SE志望者のみならずビジネス本としてお勧めしたい好著。

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