著者名;二木麻里 中山元 発行年(西暦);2001 出版社;筑摩書房
デジタルで書くことについては、ある程度匿名性もあり、著作権やほかの方の人格をそこなうことのない情報倫理に配慮していれば、許容される範囲は広い。しかしながらアナログな印刷形態となると、商品価値そのものも内容もそれなりのものが重視されてくる。しかも、デジタルとは異なりすぐ簡単に「訂正」「修正」がきかない点が問題だ。しかしながら現実世界では、アナログな形態の論文や書籍が重視される。この本はそうした論文発表にいかにデジタル技術を利用するかといった観点から書かれている。
個々のパソコンを記憶装置と考え、新しい「拡大記憶装置」としてインターネットとこの本では位置づける。メーリングリストやウェブサイトなどで情報を目的に応じて収集するとともに、「ものを書く道具」(アナログの意味と理解)としてコンピュータを整備するスキルを細やかに解説してくれている。後半部分はややワードのテクニカルな著述に終始されたきらいはあるが、前半のデータベースとしてパソコンを活用するスキルはきわめて有効と考えられる。おおむね人間の考えることはどこかで似通ってくるので、研究論文や書籍の発行ということになれば、すでにある論理や事実、結論というのはなるべく避けておかないと、アナログ形態の印刷物では種々の不都合な面もでてくる。インターネットやデジタル技法のみならず雑誌記事や紙の論文の検索方法についても言及されており、情報化社会でいかにして「印刷物」を書くか、といった技法が網羅的に著述されている。発行から3年が経過する本ではあるが、ともすれば半年で陳腐化する情報系等の書籍の中で、ほぼすべてのスキルが2004年の現在も活用できると思われる。デジタルとアナログのハザマをいかに変調・復調するかという機能をもつ新書であり、いわばモデム的な役割を今しばらくは機能する本ではないか。お勧め。
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