著者名;和田秀樹 発行年(西暦);2002 出版社;サンマーク出版
ロバート・ストロロウという精神科医はこれまでの人生経験から一定の結論をあらかじめすでに決定してしまう原理を「組織化原則」とよんだ。しかし,現代のように変化の激しい時代にはこうした組織化原則や自働思考はなるべく排除し,より多くの選択肢を常に準備できるようにしておきたい。他人の知識や推論を柔軟に吸収できる能力もまた現代には必要な原理である。
記憶力を強化するには復習が大切[予習もできればしたほうがよい)といった原理原則は学校社会で身につけた貴重な体験ではあるが,社会人になるとそうした記憶は薄れていく。また中間試験や期末試験など定期的に考査が行なわれ,そのたびごとに復習を繰り返してきた経験もまた社会人には活用できていない面があるのは要注意であろう。また不安や葛藤は青年期に特有のものかもしれないが,これを能力開発に積極的に活用していく方法もある。人間は自分には甘い生物であるのだから不安や葛藤を安易な方向で解決したがる傾向がある。行動療法とよばれる治療方法を基礎として,抱えている不安や葛藤を「カッコにいれて」目の前の課題をクリアしていくという姿勢を著者は重視する。心の状態は別にして課題をクリアしていくことを習慣にしていくことこそが能力開発の一つのスキルということだ。多少体調などが悪くても会社に出社してその出来・不出来はとわず「仕事をしないよりはまし」というように考える。これは森田療法にもつながる思考方法だが,思考方法が変われば認知する世界観も大きく変化する。こうした行動ありきの習慣によって不安や意欲低下を防止する機能がそなわる。またやる気がでるのをまつのではなく,やるべきことをやっていく。小さな成功体験を積み重ねていくという方法も確かに有効だろう。
また「書き出す」ことでより客観的に自分の置かれている状況を客観的に認識できるようになる。こうした場合には図式化してみるのも有効かもしれない。文章を書くことには想像以上に心理的に良い効果があるというのだからそれをとりいれない理由はない。また自分に対してアメトムチを用意する外発的動機論を採用するにも有効そうだ。仕事のノルマとルールは自分で決定すること,そしてアメとムチもまた自分で用意すること。それが意欲を持続せることとなる。
人間は自己愛の生物でもあるから「自分をほめてくれる人」をそばに置いておくのも一つの方法ではある。
しかし高度経済成長期の経営者は「いいときに浮かれず悪いときにしょげない」松下幸之助のような人が多かった思われるが,こうした経営者はだんだん減少してきているのかもしれない。
キャッテルという心理学者は人間の知能を流動性知能と結晶性知能に分類している。流動性知能とは,新しい場面への適応に用いられる知能であり,結晶性知能とは過去の学習を活用する知能のことをいう。この結晶性知能は年齢をかさねるほどに伸びてくる。問題解決能力や共感能力といったものは若い人間より中高年の方が優れているのだから,年齢を理由に努力しないというのはナンセンスな行動である。成熟した人間ほど常識といったものを重視するが,常識ほど確かにつまらないものはない。
しかし常識は人間の生活を律する確かな規範といった機能を有する。
デジタル社会とはいえ過去のアナログ社会と地続きの部分もあり,こうした古い知識をムダモノと排除する必要性もない。
まっていて得られる情報に良いものが少ないというのは市場原理では当然だ。やは
り苦労して獲得した情報やそれなりにお金をかけて得た情報のほうが貴重である。こ
うした認知療法的な要素も積極的に取り込みながら,やはり「和田本」を自分自身の
中に取り込んでいくつもろである。それはすでに過去3年間の間にちゃんとした効果
と結果があり,自分にとって「よいこと」であった以上,やめる必要性を感じないた
めである。
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