2007年12月22日土曜日

「勝ち組」大学ランキング

著者名;中井浩一 発行年(西暦);2002 出版社;中央公論新社
 少子化は現在の大学に対する需要を減少させる。1980年代後半から文部省がその行政を規制緩和に乗り出し、大学相互の自由競争にゆだねることとした。その中で「大学設置基準」も緩和される一方、教養部の存在意義が奪われることとなり、東京大学、京都大学を除くほとんどの大学から教養学部は姿を消した。東京大学では唯一、駒場の教養学部を拡充し、大学院重点化に乗り出した。そのプロセスで教官の業績評価など改革を推し進めると同時に、法学部・理学部・工学部などの部局化各学科のタコツボ現象の廃止などの改革を推し進めたプロセスが記述されている。「ユニバーサルイングリッシュ」は書店でもベストセラーとなったが、それとともにビデオ教材などの作成もした。また1994年には「知の技法」など非公式テキストもベストセラーとなっている。柴田翔氏は教養学部を応用人文学として位置づけ、文学部を基礎人文学の研究の場として機能させることを考えていたようだ。「基礎人文学の防衛は、重点化の波で着ていく可能性があり私大では守れない」。無駄は学問には必要でそれが知的生産性を高めるという考え方には個人的に共感を覚える。
 タイトルとは裏腹に、いわゆる「勝ち組」などのランキングはされていない。実際のところ教養学部などの解体のプロセスやこれからの大学のあり方といった本質的な議論が展開されている。むしろ同じシリーズの「潰れる大学、潰れない大学」(中公新書ラクレ)の方がいわゆる「勝ち組」ランキングに等しい内容かもしれない。この本では退職勧告制度をはじめて取り入れた山梨大学、日本語教育を行う高知大学、関西大学の資格講座、私立大学の経営困難といった事象を紹介している。
 いわゆる遠山プランでは、国立大学の再編・統合、国立大学に民間の手法導入、トップ30を世界最高標準に、という3つの柱がある。このうねりの中でどういった改革のプロセスがとられているのかは大学の外からはみえない。とはいえトップ30の候補にはやはり、旧帝(北海道・東北・東京・名古屋・京都・大阪・九州)、旧六(千葉・新潟・金沢・岡山・長崎・熊本)、旧官立11(東京工業・一橋・神戸・筑波・広島・弘前・群馬・東京医科歯科・信州・鳥取・徳島・鹿児島) がある種のランキングにはなる。こうした序列が戦後あまり崩れたことはないが、どれだけ研究や教育の成果が出せるかで決まるのだから、おのずと確かに自由競争が大学間の中でさらに強化されそうだ。

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