2007年12月22日土曜日

クビ論

著者名;梅森浩一 発行年(西暦);2003 出版社;朝日新聞社  
 チェースマンハッタン銀行、ケミカル銀行などの人事部長を30代で務めた著者。1000人以上のリストラにかかわった人であるが独特のクビ論を主張する。日本人離れしているとは思うが、その一つ一つが正論である。ただし著書の中で執筆者も書いているとおり、訴訟になった場合には相当苦しいことになっていただろう。それをたくみに理想的な組織に近づけるために努力してきた点が外資系企業で評価されてきたのだといえる。とはいえ日本企業がかつてもっていた終身雇用制度に対してはまた一定の理解が示されている。要は企業風土にあわないリストラクチャリングはかえって企業の活力を弱める傾向が強くなるということであろう。去り際に人望や実力があった人間についてはフェアウェルパーティ(サヨナラ会)がおこなわれるがそうでない場合には、そうした会は開催されない。外資系では最後の最後まで実力の差異が出る。pay for performanceといった公平さがひとつの尺度になっている。パフォーマンスに応じた給料ということだが、これはこれである意味割り切りやすい論理ではある。しかしどのスパンでどの程度パフォーマンスをあげればいいのかはまた企業や上司によるのだろう。成果主義にはそれなりのまたリスクを背負うこともあり、それがまた日本企業の苦しみを深くしているようだ。1994年時点と比較すると金融業に従事している人間は、およそその3分の1にあたる人間が金融業を離れている。これはもう立派なかつての石油・石炭・鉄鋼と同様の構造不況業種に近い。実力とはそれではなにか、リストラされないのにはどうすればよいのか、といった場合に著者はナンバー1ではなくオンリー1になることを薦めている。また社内の話、内向きの話が日本企業ではまだ多いという欠点もある。早い話、どこの日本企業でも自分の会社の話だけに詳しくなってもどうにもならないのだ。
 厳しい内容の本ではあるが外資系企業のフェアな論理と、それを外形的に取り入れてしまった日本企業の問題点がうかびあがる名作である。

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