著者名;芽根 聡 発行年(西暦);1998 出版社;新世社
1998年時点の著述だがそれでも21世紀の会計基準にふさわしい内容といえるかもしれない。課題はまだ解決されないまま残存しており、企業の「支配」や「経済的便益」といった観点で貸借対照表能力を論じた書籍が1998年時点での発売であるにもかかわらず。概念フレームワーク自体が発表されたのは2004年年末である。欧米との会計処理についての調整作業はまだ残存しているから、まだまだこの本の社会的意義は失われていないと考えられる。
第1章 リース会計の基礎
20世紀末のリース設備投資の状況をまとめている。7兆円を超えているが現在ではさらに伸びているのだろう。レッシーとレッサー、サプライヤーとの関係を概論する。経済的実質が金融的機能を有する金融取引とされるので、割引現在価値もしくは現金購入価額については、当該資金を実質的には借り入れて資産を調達し、リース期間満了まで利息とともにそれを支払うという形態を想定する。資本化処理をすると企業の財務状況を悪化させるということから資本化処理逃れをする企業が多いがその会計処理内容も紹介される。アメリカでは1970年代にオフバランスシート・ファイナンシングとよばれるこの方法が普及したとされるがそれはその後の日本も同様であある。
第2章 アメリカにおkるリース会計の展開
アメリカでは朝鮮戦争における特需などでセールアンドリースバック取引が重用されたという。賃借人が所有資産を売却し、それと同時に売却資産のリースを受けるという取引で、この方式が拡大されるにつれ、賃貸借処理で処理することへの批判がまきあがる。基本的には1976年のSFAS13号が画期的といえるのかもしれない。リース企業からの批判は日本でも同様だがアメリカでも業界からの反対意見が多かったようだ。リース資産の資本化処理では、オフバランスのメリットが失われるとも考えられたからだ。このSFAS13号にて、キャピタルリースの判定基準が示され、それが日本のリース会計基準にも影響を与えていると考えられる。
①リース期間満了までに当該資産の所有権が賃借人に移転する(所有権移転基準)
②リースに割安購入選択権がある
③経済耐用年数の75パーセント基準
④公正価値の90パーセント基準
キャピタル・リースを流動負債と固定負債に分離するのも日本の現在の企業会計と同様であろう。ただしこのSFAS13号制定の後、アメリカ企業でも資本化回避運動がなされたことも紹介されている。
第3章 リース会計の国際的動向
国際会計基準17号ではリースの会計処理が定められた。ファイナンス・リース、オペレーティング・リースの定義もここで定められている。1982年。その後1997年に改正され、リースの賃借人と賃貸人についての開示項目を拡大し、さらに金融収益の計上基準を明確にした。「リース取引から生じる資産および負債、収益および費用は他の資金調達手段から生じる資産および負債と同様に取り扱われなければ成らない」
それまでは賃貸人の金融収益の計上基準は自由裁量であったが、この段階である程度の指針が定められる。このほかイギリス・ドイツ・フランスのリース会計についてもここで紹介されている。
第4章 わが国におけるリース会計の展開
リース会計基準制定前の計算書類規則から説明されているがこれは会計の歴史に属する分野だろう。会計基準制定後として、リース料のみならず、リース期間で支払うべきリース料総額やリース契約残存期間なども情報開示されるに至ったことにふれられている。イトーヨーカ堂やリコーなどの連結財務諸表も掲載。実質的には1994年から開示が始まる。ただし会計基準でも通常の賃貸借取引に準じた会計処理が認容され、注記で資本化取引に相当する資産情報・負債情報・損益情報・処理基準などが開示される。これは日本に特有の会計処理である。日本ではこの注記による資本化基準というのが相当に多く利用されていると考えてよい。
5章 リース会計の展望と今後の課題
この章が一番現代に向かって著述された章といえるかもしれない。多くの問題はそのままつみこされている。リース契約は未履行契約なのでこの貸借対照表能力を論じることが、他の分野にも通じる議論となるという趣旨である。この未履行契約について考えることはデリバティブなど他の分野にも適応できるフレームワークを形成するわけだ。この場合にはASOBATの会計情報の質的特性が参考になる。つまり、未履行契約に関する権利・義務を引き渡し以前に認識することは、目的適合性・表現の忠実性・比較可能性といった特性から支持されるものであり、特に目的適合性の観点から将来キャッシュ・フローの予測にかなうという考えである。さらにはFASBの「1年を超える解約不能リースの資本化」という新たなアプローチも呈示されている。また資産の本質におkる「企業の支配」、負債の「経済的便益の犠牲」といった資産・負債アプローチの観点からの著述も2005年の日本にとってはまだまだ新鮮な響きをもつ。
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