2007年12月3日月曜日

脳はここまで解明された

著者名;合原一幸ほか 発行年(西暦);2004 出版社;ウェッジ出版
 主に工学部系統の研究者による脳科学の研究説明だが、化学式や電算関係の図式などある程度理科系等の基礎知識がないと読むのには辛い。ただし内容的にはかなりつっこんだところまで説明されているので、理解すればそれなりに応用できる著述が多い。脳の仕組みとパソコンの仕組みはもとより構成されている素子の性格がぜんぜん違う。大量のニューロンによって構成されている脳は、実はかなり不安定な構成素子であるし、さらにはその相互作用やネットワークの作り方も異なる。そしてソフトウェアが更新されればニューロンの結合形態もどんどん更新されていくというやっかいな性質をもっている。にもかかわらずコンピュータを凌駕する機能を発揮するのが人間の脳であり、だからこそ多くの研究者が魅了されるに違いない。前頭葉という人間の高次の知的機能をつかさどる部分が逆に原始的な動物的な部分の機能を制御するという役割をはたしたりするので、この部分の機能解明は非常に重要だろう。ただし、訓練次第でこの前頭葉はある程度は機能を発達させることもできるかもしれない。特にオートポイエーシスとよばれる自己形成に関する著述が興味深い。脳の神経細胞そのものは各人は平等にもっているが、それがその後の学習や経験によって大きくネットワークの形態が異なってくる。こうしたネットワーク形成の理論がさらに日常的に紹介されていくようになるともっと学習効果があがる勉強方法などが開発されてくるようにも思う。難解な本ではあるがきわめて有用な自然科学の書籍である。

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