2007年12月22日土曜日

タイムライン(上)(下)

著者名;マイケル・クライトン  発行年(西暦);2002 出版社;早川書房
 「ジェラシック・パーク」「ロスト・ワールド」「遊星からの物体X」「ツイスター」と原作をことごとく映画化されたエンターテイメントの旗手マイケルクライトン。この作品も映画化されているが、ハリウッドがやることだから原作の格調から何からぶちこわしの映画であろうことは容易に推察がつく。中世の百年戦争の舞台に20世紀から送り込まれた教授と大学院生4人。城をめぐる攻防戦の中で果たして教授を14世紀から連れ戻すことができるのか。衣装、騎士道、中世の綿密な時代考証がこの作家の取材力を物語る。一種の「中世暗黒時代説」を否定し、火薬が伝わったころの話もエピソードとして織り込んである。もちろん舞台考証として専門家がみればまだ不備な点があるのかもしれないが、考古学の最近の動向も含めてエンターテイメントとして完璧なまでに計算された小説。上巻、下巻で各1700円とけっして安くは無いが、この本を読み終えるまでに得られた快感や擬似経験は何事にも変えがたい「価値」あるものだといえる。歴史ファンにもSFファンにもお勧め。そしておそらくは最低の映画であったろうものをみて失望した人も、原作を読めばクライトンがいかにすぐれたライターなのかがわかっていただけるはずだ。そう、ハリウッドは「はしょり」の名人であると同時に、面白さも半減させることに関してはプロだったりするのである。

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