2007年12月23日日曜日

眠らない女

著者名;酒井あゆみ  発行年(西暦);2001 出版社;幻冬舎
「眠らない女」はいわゆる「ダブルフェイス」の女性たちの本である。昼間、オペレーター、証券会社、学校などで働く女性たちが夜は別の顔をまとうという15人の話。多少脚色もされているだろうが、70パーセント程度は真実だろう。表向きの顔を装うのはさして難しいことではない。東京電力OL事件というのがちょっと猟奇的に騒がれたが、コトの本質はそんなところにあるのではなかろう。昼間の生活の「やるせなさ」に夜の顔にむかい、そして自分を失いそうだから「昼間の仕事をやめない」‥。そこには「貨幣」というものが介在しているのが印象的だ。身体と貨幣をいったい何に消費しているのかというと自分自身の欲望とやるせなさの解消に消費している。そして「お金」とともに、自分自身の容貌について「30を超えると‥」という現実的な計算も入り混じる。こうした「したたかさ」こそがこのダブルフェイスの特徴だが、その後の人生の安定まで保証できるものではない。もっとも安定というものに「価値」は見出していないのだろうが‥。日常生活の論理とは異なる市場で性を媒介して生きていく人生がある。ただしそこに成功というものがあるとすれば、再び「日常性」の中に埋没せざるをえないというしがらみがあるわけだが‥。

0 件のコメント: