2007年12月2日日曜日

天皇はどこから来たか

著者名;長部日出雄 発行年(西暦);2002 出版社;新潮社
 縄文時代の文化が現代のハイテクにつながるとする日本文化の原点を探る書籍。タイトルは刺激的だが、現代のルーツを解き明かしていこうという態度は、非常に知的謙虚に通じる大事な姿勢だと思われる。
 「ミ」という発音は、「ワダツミ」「ヤマツミ」などの言葉の中にも用いられるが、「神様」の意味となり、「チ」というのは恐ろしいもの、力のあるもの「ヤマタノオオロチ」という‥。また「柱」というものを重視して非常に霊的な力があるものと昔はされていた。神代史はあくまで説話であってそれを逐条的に解釈するのではなくむしろそれを一定の主義主張を前提として読むことによってかえって古事記の精神を破壊してしまうといった戦前の津田左右吉の主張を紹介。今ではあたりまえの態度のようにもみえるが、日本民族が一定の方向をめざしている時期にはかなり勇気がいる発現だったのだろう。縄文時代の刺青の思想が、土器に文様を彫るのと同じ思想で「神秘的な力に依存しようとする態度」とし、縄文時代から現代までを一気にかけあがるこの本にはあっという気持ちもする。すぐれた日本文化論だし、同時に現代批評にもなるというこの本。
 面白い。

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