2009年1月27日火曜日

民主党~野望と野合のメカニズム~(新潮社)

著者:伊藤惇夫 出版社:新潮社 発行年:2008年 評価:☆☆☆☆
 先日の日本経済新聞の報道では政党支持率でついに自由民主党を抜き、第一位へ。麻生内閣の支持率低下とあわせて考えると政権交代が次の衆議院選挙で実現する可能性はかなり高くなってきた。日本共産党が小選挙区で立候補者を絞り込む作戦にでてきているのも自由民主党には不利な条件となっている。ただ意外にわからないのは民主党内部のグループや個々の政治家の過去の履歴だ。マスコミ媒体ではどうしても政権与党の動向が中心となって報道されるので、民主党の政治家がこれまでどういう出自でどのような政策目標をもっているのかがよくわからない。それを一気に解消してくれるのが自由民主党、新進党、太陽党、民政党、民主党事務局長を務めた著者のこの新書である。
 民主党内部の事情に精通しているのに加えて、もともと自由民主党にも在籍していたわけだから自由民主党と民主党の党内力学の「違い」も明らかにしてくれる新書。国会対策委員長の山岡賢次氏にしても、この新書を読めば小沢一郎氏と極めて近い元自由民主党員であることがわかるし、管直人グループに名を連ねるツルネン・マルテイや筒井信隆氏など市民運動を重視するメンバー、鳩山グループの左から右へ大きくひろがる人脈といった構成をみていると、現在の民主党執行部はそれなりの内部力学でトロイカ体制となっているのも理解できる。前原グループ、野田グループという次世代の若手政治家の集結する場所もあり、こうした次世代層の厚みはもしかすると自由民主党よりもバラエティに富むと同時に、「用意周到」な政治家構成ともいえるかもしれない。統一性にかける印象はあるが、自由民主党とはまた違う保守政党であることには変わりがなく、こうした政党が政権を握った場合、連立の枠組みにもよるが、同じ保守主義にたっても相当自由民主党とは異なる政策が実行されそうな予感はする。一方、野党としての経験値がきわめて少ない自由民主党はいったん政権を今回渡した場合、これまでの細川内閣などとは異なり、参議院の状況も含めると3~4年は政権から離れるリスクもある。野党としての存在意義をどこまで示せるかがポイントだろうか。一読しても面白い新書だが、民主党がらみのニュースが報道されたときに「レファランス・ブック」としても利用可能な書籍。著者は必ずしも民主党支持とか民主党寄りというわけでもなく、けっこう辛口の文章も散見されるのが興味深い。

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