2009年1月22日木曜日

会社の品格(幻冬舎)

著者:小笹芳央 出版社:幻冬舎 発行年:2007年 評価:☆☆
 会社の品格を中傷的に議論するのではなく、どちらかといえばかなり個別具体的に議論した新書。個人の集合体とは別個に組織独特の「品格」がうまれ、さらにその「品格」に過剰適応することによって、次第に個人の倫理感が失われ、組織の倫理感が優先されることになる。その結果、組織自体がゆがんだ「ルール」で統制されて、そうした独自ルールの中で内部競争には勝ちあがるものの、「外部」の競争にはとても耐えられない「人間」が誕生していく。
 金銭報酬以外に「意味報酬」を与えられない会社は社員から選別されない存在になる…とややサブプライム不況前の経済実態でのコメントもあるが、基本路線はまったくそのとおり。共同幻想を社員と経営者が作り出せる状況というのが意味ある会社、品格ある会社にとっては大事。最終的に「意味」や「意義」をうちだせず、高い報酬もしくは会社内部だけでしか通用しないポジションでしか「モチベーション」を刺激できないのであれば、「品格のない会社」ということで長期的な市場競争には負けてしまうだろう。
 やや「テーマ」が壮大すぎるのと、経済状況が変化してしまったことで、全体的なテーマが「ぼんやり」してしまったのが残念だが、「過剰適応」など個別具体的なテーマは、やはり会社員出身の著者だけあって鋭い。会計上の利益目標のみならず、社会的な意義など「意味づけ」ができない企業の「品格のなさ」を鋭く指摘しているのが好ましい。

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