2009年1月27日火曜日

起業家の銭地獄(大和書房)

著者:有森隆+グループK 出版社:大和書房 発行年:2008年 評価:☆☆☆☆
 全3巻のうち第2巻に相当する文庫本。経済犯罪の裏表に精通しているジャーナリスト有森隆の書き下ろしの力作だ。これまでの仕事の「まとめ」に相当する三部作だが、特にこの第2巻では、イ・アイ・イグループと旧日本長期信用銀行との関係、誠備グループ、旧アスキー、光通信、リキッド・オーディオ・ジャパン、クレイフィッシュといった企業を実例として、過去の実業家の縦と横の人間関係、さらに新聞や雑誌で報道された断片的な事件をつなく情報と分析が開示されている。おそらく執筆、出版にあたっては弁護士などと相談して相当慎重に文章を選んで「事実」を著述していったものと考えられる。一部、「ここにはもう少し何かあるのではないか」と思う部分もあるが、法廷闘争に持ち込まれて「勝ち目」が薄いと予想される部分についてはあえて、無難な表現に抑制するということも編集段階では当然なされただろう。ITバブルの始まりと終わり、営業部隊の販売優先、技術後回しの熱狂など、過去の事例は経済犯罪では将来にわたってまた「繰り返す」ことが往々にしてよくある。「地上げ」についてもつい最近、老舗の大手都市銀行と裏世界が組んでの「地上げ」が新聞で報道されていた。「ヒットメール」というホスティングサービスの事例など、これからさらによく似た「商売」がネット上でも展開されていくことだろう。報酬制度のあり方から金融行政までミクロからマクロまで教訓に満ちた生きた事例の総まとめ的単行本。

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