2009年1月18日日曜日

失敗に学ぶ不動産の鉄則(日本経済新聞出版社)

著者:幸田昌則 出版社:日本経済新聞出版社 発行年:2008年 評価:☆☆☆
 中堅のデベロッパーが昨年続けて経営破たんした。その後2009年を迎えたが、株価の動向ばかりがクローズアップされて不動産市況のほうはあまりマスコミでも伝えられない。一部の都市銀行が資産について2800億円の減損処理を行うと発表。これも主な理由が保有している株価の下落だが副次的に融資先の企業の業績悪化があげられている。実際に担保にとった資産が目減りしていって将来キャシュ・フローが帳簿価額を下回れば有価証券と同様に収益性の低下ということで減損処理を行うことになる。おそらく2007年の不動産バブルは完全にはじけたという著者の見方はほぼ正しく、今後も不動産市況の大幅な上昇というのは考えにくい(材料に乏しい。低金利ぐらいは好材料だが…)。
 公的価格を判断材料にせず、実勢価格を重視するとともに利便性を現場をふまえて考慮してから不動産を購入するべきという著者の主張にはまったく同感。すでに人口減少が明らかになっているうえ、農地から宅地への転用や工場売却など土地の供給は拡大するのだから、需要が減少して供給が増加すれば、当然価格は下がる。耐震偽装の問題と建築基準法の改正などで不動産・建設業界への打撃は確かにあったが、長期トレンドはやはり土地価格の下落、建物価格の下落だろう。その中で価格が「高止まり」するのは利便性と安全性などに優れた物件のみという事実は認識したくはないが、認識しておかないと多額のローンの返済に人生を費やすことになる。高齢になってからの住宅の維持・管理の手間なども考慮してから、自分自身の「お買い物」をしないと投資物件としての不動産というのは有価証券以上に危険な代物かもしれない。わかっているようで分かっていないし、奥の深い「不動産」の世界。公示価格や土地ブームなどにまどわされない消費者の知恵をわかりやすく伝授してくれる。

0 件のコメント: