2009年1月24日土曜日

第1感(光文社)

著者:マルコム・グラッドウェル 翻訳:沢田博・阿部尚美 出版社:光文社 発行年:2006年 評価:☆☆
 「最初の2秒」の判断力の凄さを実証する本。もちろん「最初の2秒」が間違うこともあるわけだが、そうした大事なインパクトについての解説書。「状況」を輪切りにしてこれまでの類型パターンにあてはめて「おかしい」「正しい」と判断する能力は、たとえば多数の人間と会話をしているうちに人間の性格をいくつかの類型に分類し、まだ会ったこともない人間であってもその「輪切り」のどこかに区分してある程度「真実」を類推できる…といった経験則に近いものかもしれない。先入観にひきずられてしまう怖さもあわせもつ「最初の2秒」だが、時間がないがゆえに、先入観によって誤った判断を下してしまうこともある。しかし時間的制約はいつでもどこでもありうることなので、blinkをいかに適正な判断能力としていくのか、といった観点が興味深い。結論は実は曖昧だし、しかも最初の部分がかなりインパクトのある事例が紹介されてはいるが、かといってそれが「絶対」だと著者は主張しているわけではない。「最初の2秒」は大事だが、大事であるがゆえにそれにひきずられて大きな過ちをおかしてしまうリスクについても言及している。とどのつまりは日常生活を送る上で、「最初の2秒」の中には想像以上に凝縮された「判断」「慣習」「先入観」などがこめられており、だからこそその「2秒」を大事にするべきだ…ということになろうか。面白い本だが、濃密な時間を過ごしたい人にはお勧めだが、長い時間をゆっくり過ごす人にはあまり関係ない本かもしれない。だが2秒の積み重ねが人生の蓄積になるのだとしたら、やはりだれしも内容に興味がわく本だといえるだろう。定価は1,500円、四六版264ページ。

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