2009年1月27日火曜日

公明党VS創価学会(朝日新聞社)

著者:島田裕己 出版社:朝日新聞社 発行年:2007年 評価:☆☆☆
 政教分離のため創価学会と公明党は一定の距離を置き、選挙のたびに支援依頼を公明党が出して創価学会がそれを了承するという手続きをするのだという。体質としては保守主義だが、境遇としては革新という微妙な政党体質を2大政党制の中で自由民主党と連立することでクリア。この本の中での情勢分析と現在とではかなり選挙事情も異なってきているが、少なくとも自由民主党にとっては公明党との連立抜きでの衆議院選挙というのは考えられない状況になっている。そして民主党の基盤が公明党と同じく都市部にあるため、選挙協力がしにくいという事情もこの本では紹介されている。
 こうした中、宗教団体としての創価学会と政党としての公明党が必ずしも「一致団結」というわけにはいかなくなってきている世界情勢がある。自衛隊の海外派遣問題についてもそうだが、創価学会の会員には平和憲法の維持と海外への自衛隊派遣には慎重な人が多い。だが政権与党の公明党は、現実的な国際的協調路線が必要なのでソマリアであろうとそれ以外の地域であろうと、外交上の必要性がでてくれば国際貢献の名のもとに自衛隊を派遣せざるをえないという状態がでてくる。時に対立するダイナミズムもこの2つの組織内には出てくる…といった側面は、外部からみて「一つの組織」と見るよりも、ずっとわかりやすいモデルを呈示してくれることになる。今後自由民主党とともに野党として活動することになるのか、あるいは選挙後連立政権の一翼を担うことになるのかは不明だが、創価学会の票については公明党以外に自由民主党も頼りにしている部分があることと、政策面においても無視できない側面があること(たとえば助成金など)をこの新書は明らかにしてくれている。内容は濃く、歴史的な経緯も著述されているので「今」を知るためには「過去」をさかのぼってみるというこの内容構成は特にお勧めだ。

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