2009年1月4日日曜日

誘拐症候群(双葉社)

著者:貫井徳郎 出版社:双葉社 発行年:2001年
 もともとは1998年に単行本として発刊されたものなので小説にはダイヤルアップでネットワークに接続するシーンやプロバイダの会員履歴が閲覧できるシステムなどが出てくる。もちろん現在はこうしたことは不可能だし、もしありうるとすればSNSのごく一部の加入者だろう(SNSであっても正直に実名や住所を掲載しているケースはごくごく稀だ)。犯人は最初から明らかにされているのだがその逮捕に至るまでの流れは、現在だともう少し変化してくるかもしれない。またネットで個人情報を収集するというのもかなり難しい時代にはなってきているのでスパイウェアなどにも通じているプログラミングの知識や実務経験がある人間などが犯人像として浮かび上がってくることだろう。またハードディスクのデータ削除も現在ではフリーウェアで相当高度になってきているので、これも技術の進化が1998年からわずか10年で相当に高度になったという実感がわく。いずれはアイデアはそのままにさらに発展させていくと面白いミステリーということになるのだろう。しかしこの頃の双葉社は本当に実験的な作品を連続して出版している。篠田節子の名作「ゴサインタン」も直木賞受賞前の作品だが双葉社から発行されており、現在も双葉文庫から発刊。当時の双葉社にはやはり文藝に関する何か秘めた思いがミステリーなどのジャンルを問わず社内に醸成されていたのかもしれない。

0 件のコメント: