2009年1月5日月曜日

勉強法が変わる本(岩波書店)

著者:市川伸一 出版社:岩波書店 発行年:2000年
 岩波ジュニア新書だが、内容的には社会人が読んでも役に立つ。問題を解いているだけでは学力がつかないなど受験勉強や資格試験などに有用なスキルが紹介されているのだが、やはり認知心理学の先生だけあって非情に用語の使い方が丁寧で言い回しも慎重だ。問題の解説などをよく読んで理解するなど復習のやり方や認知心理学やクリティカル・シンキングの書籍なども紹介されている。また強い信念の前に弱い反論だと免疫効果がついてかえって「信念」が強化されてしまうケースでも強い反論で世界観がひっくりかえることもある…という紹介から論文の書き方まで著述されている。
 スキーマ、処理水準説など難解な用語がまじっているので、ある程度学習方法に興味をもっていた自分にとってはさほどではないが、高校生あたりがいきなりこの本を手にとって読むと仰天するのではないか。
 この新書の中にも名前がでてくるのだが、和田秀樹氏の著作物が高校生や社会人に人気があるのは、復習の効果などをある意味では乱暴なほどわかりやすく書いてしまい、その結果、専門家からは「なんだろう」といわれつつも実務的には役に立つのが和田秀樹氏の著作物だからではないだろうか。厳密性はかけていても「数学は暗記だ」と言い切られると、「暗記してみよう」というモチベーションがでてくるのが初心者だし。物理を学習するのにニュートン力学とは…といった講義よりも、過去問題を丁寧に解いて覚えるといった手法が、とにもかくにも物理を学習してみようという気にはなる。暗記主義という言葉もわりと誤解を招くかもしれないが、初心者が新しいジャンルに挑戦するときにはそれほど悪いことではないと思う。「考える」のはある程度暗記をして自信がついてからでもいいような気がする。とはいえこの新書ももちろん悪くはない。さほど最終的に和田秀樹氏の主張と異ならない結論になっているように思えるし、さらに高度な認知心理への世界に読者をいざなう魅力にもあふれてはいる。

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