2009年1月4日日曜日

失踪症候群(双葉社)

著者:貫井徳郎 出版社:双葉社 発行年:1998年
 若者たちの謎の失踪事件が相次ぎ発生。表立って動けない警察の代わりに特殊の外部組織が真相を探る…。住民基本台帳法が改正される前の話で、現在はたしかそう簡単には閲覧ができなくなっているという事情や戸籍の附表についても行政書士試験などでかなり出題されたのである程度戸籍法や住民基本台帳法を学習した人には常識化しているだろう。いずれも個人情報保護法がまだ制定されていない時代だが、今だったらもっとこの「ミステリー」を解読するのには時間がかかったかもしれない。ただ一つ問題は戸籍法についての解釈だが、法律の趣旨からするとこのミステリーに言及してあるような「方法」が本当に違法でないかどうかはちょっと難しい。明文の規定は確かにないが、身分関係を確定するための法律なのにそれを崩壊させかねないような「方法」が明文の規定がないからといって違法ではない…ということにはならないのではないか。公文書偽造など別の要件にてらして刑事告訴することは十分可能ではないか…というのが個人的な疑問。ただし法律的な解釈や2009年時点での法制度などはあまりこの本を読むときには重要な要素ではない。あくまでも1990年代初頭という時代の設定枠さえしっかりしていれば、けっしてこの本を読む上でなんの瑕疵にもならないような疑問である。
あ、なおライブハウスが物語の中に登場してくるが、描写されているような「礼儀知らずのバンド」というのは今ではどこであろうと即刻出入り禁止になるほか、路上のコンサートそのほかも現在では東京都の許可が必要ということで、それほどの礼儀知らずは演奏もできないシステムになっている。これも時代の変化ゆえか。

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