2009年1月14日水曜日

グラミン銀行を知っていますか?(東洋経済新報社)

著者:坪井ひろみ 出版社:東洋経済新報社 発行年:2006年 評価:☆☆☆☆
 融資先を小額でしかも貧しい人に限定するマイクロファイナンス専門の金融機関がバングラデシュにある。貧困を「緩和」し、特に貧困女性の自立支援を図ろうとするこのグラミン銀行は無担保融資である。「銀行」ではあるものの「社会組織」でもあるというややわかりにくいグラミン銀行の実態を著者が現地に尋ねていって取材、さらに解説を加えている。もともとは山口大学博士課程の博士論文として執筆されたものがこうして単行本として出版されたという経緯をたどるが、無担保融資で零細でしかも小口の「銀行」がどうしてビジネスとして、あるいは社会組織として成立できるのかを明らかにしてくれている。推薦の言葉もムハマド・ユヌスグラミン銀行総裁がよせている。
 人間開発指標が177国中138位ともともとかなり低所得者が多い国の上、イスラム教の教義が女性の自立を阻む要素がある。また貯蓄そのものを女性が行うことが難しい状況にあったが、グラミン銀行のマイクロファイナンスで、小規模ビジネスをはじめて利益をあげ、一定の貯蓄をたくわえる女性や屋根のついた家を建てる女性、また「夫」が逃げた女性が独立していく一つの「きっかけ」にもなるなど具体的な事例が多数収録されている。だれだって「明日を考える」。だれだって貯蓄もしたければお金を借りて収益活動をしたくなることがある、だれだって住宅ローンを組みたくなることがある…そうしたニーズに応えつつ、さらに社会組織としてグループ活動の活性化も図る様子も著述されている。おそらくすべてがすべてうまくいっているということではなく、まだまだ試行錯誤の状況もあるのだと思うが、少なくともこれまでの実績と課題を浮き彫りにした実践経済学の書籍。読んでいるうちに経済活動以外のイスラム教のしばりや、バングラデシュという国の社会制度の問題なども考慮しなければならないことに気づく。176ページで1890円。

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