2009年1月26日月曜日

男はなぜ悪女にひかれるのか(平凡社)

著者:堀江珠喜 出版社:平凡社 発行年:2003年
 非常に興味がそそられるタイトルに惹かれて衝動買い。しかし老舗出版社の平凡社だけあって、中身は非常に真面目で学術的な内容。「悪女」の定義として副次的に「顔かたちの醜い女」(角川古語辞典)という意味があるとのこと。なんとなく黒いカクテルドレスに違法すれすれの「ワルイコト」をする往年のキャサリン・ターナーみたいなイメージで「悪女」をとらえるのはかなり「一方的な定義」だったことがのっけから明かされる。イメージとしての「悪女」なので当然時代によってイメージの内容は変化するが、そのイメージの変化を「試し」に追ってみるとどうなるか…という内容の新書である。最終的にはレディース・コミックの世界の分析にまで著者は立ち入るのだが、立身出世タイプの悪女で、でも弱さもあわせもつというある漫画のキャラクターに同時代の「悪女」をかぶらせ、「立身出世」が無理ならば裏技として「しかるべき男性」をつかまえて結婚すること…というテクも伝授してくれる。
「しかしこのような男の数には限界がある。やはり頼れるのは自分自身か」という文章がその後に続くのだけれど。特定の言葉に特定のイメージを曖昧なうちに「一色」で塗り固めてしまうのは危険な兆候で、「悪女」という言葉そのものもかなり多元的で豊饒なイメージを含む。言葉の一つ一つに多義的な世界がある以上、「この言葉はだめ」「あの言葉もだめ」という言葉狩りの不毛さを逆に感じてしまう一冊。差別的言語の問題にも活用できる内容ではないかと思う。

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