2010年12月25日土曜日

さよならもいわずに(エンターブレイン)

著者:上野顕太郎 出版社:エンターブレイン 発行年:2010年 本体価格:780円 評価:☆☆☆☆☆
ドラマでは劇的な死を遂げることが多い「人間」。実際には普通の日常のなかで突然ぽっかりとその「ヒト」がいた空間が抜け落ちていく。もう「その人」がいない…ということに納得できるまで、どれだけの月日を要するだろうか。おそらく接する時間が多かったヒトであればあるほど、納得がいくには時間がかかるに違いない。この本で著者は最愛の妻を突然のある出来事でなくす。表紙には「涙」と思しき凸版印刷がほどこされ、マンガの演出もこれまでにない技法を駆使。それだけに著者と著者の周囲の人間の悲しみが凝縮している。空虚な心と言葉でいえば簡単な表現だが、実際に「空虚な心」とはどんなものか。それを二次元の世界で再現してみせた力作。ストーリーはほとんど、ない。ただ「空虚」をひたすら掘り下げていった著者の悲しみの一念で完成した作品だ。おそらく歴史に残る作品になるだろう。

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