2010年12月13日月曜日

終わりの始まり(上)(第29巻)(新潮社)

著者:塩野七生 出版社:新潮社 発行年:2007年(文庫版) 本体価格:438円(本体価格)
高校時代に「世界史」(当時)を選択して受験しようとしていた知人らは、かなりの「世界史オタク」であったように思う。まだこの「ローマ人の物語」シリーズは世になかったころだが、実にいろいろな媒体で世界史の世界に浸りきり、受験勉強というよりも世界史そのものを娯楽にしているような感じすらした。受験の神様といわれる和田秀樹氏も著書のなかで「世界史はとてつもなくできる奴はできる」と断言している。通常はあまりのボリュームの多さに受験科目としては選択しないで一般常識程度に抑えておくのが受験戦略上有利で、理系などは地理や日本史を選択するべきなのだが、それでもあえて世界史を選択するやつらは、やはり世界史がとても好きで、好きだからこそ勉強にも打ち込めて成績も伸びるという好循環を描いていたような気がする。

そしてこの「終わりの始まり」は意外にも賢帝の誉れが高いマルクス・アウレリアスの時代から始まる。戦争はローマの国境線の紛争のみにとどまり、内乱もなく平和な帝国。ただし、その治世には、飢饉や洪水といった天災、パルティア王国によるメソポタミア北部への侵入、疫病、ダキア戦役以来の60年ぶりのゲルマン民族の侵入…とけっこうあわただしい時代となる。特に文庫版217ページに記載されているゲルマン民族の襲来の地図はこれまでこのシリーズを読んできた読者にとってもショックなほどのもの。270年ぶりにローマ帝国の防衛ラインが突破される…。哲学者でもあったアウレリアスだが、世の中は頭の中ではなく、ユーラシア大陸北部に住むゲルマン民族やパルティア王国のそれぞれの思惑で動く。ゲルマン民族は狩猟民族だからローマ帝国の豊穣な土地の作物を目的としていた…だがしかしなぜアウレリアスの時代に?

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