2010年12月20日月曜日

最後の努力(中)(第36巻)(新潮社)

著者:塩野七生 出版社:新潮社 発行年:2009年(文庫版) 本体価格:362円(文庫版)
時代がもう少しずれていれば、ディオクレティアヌスもコンスタンティヌスももう少しローマ帝国の行く末を明るいものにできたのかもしれない。いっとき皇帝が6人になってしまう事態を迎えつつも、コンスタンティヌスが最終的には単独で皇帝となる。そして313年。どの世界史の教科書にも記載されているミラノ勅令によりキリスト教が公認される。着実にステップをふんで目指すべき世界をめざすというタイプのコンスタンティヌスは、キリスト教という一神教が政治に利用できることをどうも見抜いていたようだ。「ダヴィンチ・コード」などでもコンスタンティヌスについては、政治目的がほのかにただよっていたのだが、多神教のローマ帝国が一神教を認めた段階でローマ帝国の内部的崩壊も決定的になったと著者は分析している。ただしこのコンスタンティヌスは政敵リキニウスについても容赦ないしうちで処刑し、実の妹の夫であるにもかかわらずテッサrニケで隠居していたリキニウスを「クーデターをはかった」という理由で殺害。しばらくは妹との関係も良好であったと筆者はやや疑惑をもちながら書いているが…ローマの「寛容」の精神が失われたことを示すエピソードでもある。

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