2010年12月11日土曜日

悪名高き皇帝たち(三)(第19巻)(新潮社)

著者:塩野七生 出版社:新潮社 発行年:2005年(文庫版) 本体価格:400円(文庫版)
普段は文庫本には、ユナイテッド・ビーズのブックカバーをかけている。が、この「ローマ人の物語」(文庫版)については、ブックカバーなしでも十分お洒落。しかも目立たないが存在感ずっしりの装丁。表紙にはローマ貨幣が印刷され、文字は灰色に赤色と白抜きのシンプルなもの。墨の文字には赤い縁取りがさりげなくほどこされているのもお洒落。しかもコインの種類はすべて異なり、その解説は本扉に印刷されているという懲りよう。単行本では「ローマ人の物語」がメインだったが、文庫版ではサブタイトルを背に大きく印字したのも効果的。本棚から選ぶときにも選びやすいという効率性があるが、この効率性こそがローマ人の特質だった…ということで著者の趣旨が見事に反映された装丁ではないかと思う。さて、この巻では暗殺されたカリグラのあとを継いだクラウディウス。野球でいえば、楽勝ムードで展開してきたところ、一気に先発投手が崩れて、中継ぎに急遽登板といった感じ。政治でも非常にやりにくいタイミングで登板したクラウディウス帝だが、各種の歴史映画などでも「優柔不断」などのレッテルを貼られ、あまりいいイメージがない。それを著者は若干角度をかえて著述する。ただし「リーダーには不可欠な条件である何かが欠けていた」(39ページ)という条件付で。ドルイド教の司祭たちのブリタニア、ユダヤ人、北アフリカでの反乱さらには、市民との壁を作る秘書官システムの構築、プライベートな部分でのスキャンダル。しかし国勢調査や後にローマ帝国をカバーする郵便制度確立を手がけ、オスティアの港湾工事やカリグラから引き継いだ水道工事二本の完成などの公共事業もおこなう。しかし紀元54年、キノコ料理を食べた後に突然の死亡。そして養子のネロが遺言状の文言を「たて」にして皇位につく…。カエサルのパフォーマンスぶりと比較すると明らかに地味だったクラウディウス。著者はパフォーマンスも必要だったのではと指摘するが…。

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