2010年12月25日土曜日

日中韓歴史大論争(文藝春秋)

著者:櫻井よしこ 古田博司ほか 出版社:文藝春秋 発行年:2010年 本体価格:750円
日本人のジャーナリストや学者、中国や韓国の学者などが一つの場で歴史問題や外交問題を論じる。論点はあるのだが、論点をささえる論理は3カ国ともすれ違いというのが率直な印象。外交問題も政治問題だとすると「正しいか正しくないか」ではなく最終的には「国力」みたいなもので決まる命題なのかもしれない。国境紛争にしても、けっきょくは武力行使にどちらが最初に踏み切るか…といった究極の選択肢にまで入るのかもしれない。21世紀の場合には18世紀とは違って軍事力ではなく経済力のほうが武器になるのだとしたら、この3カ国のなかでは中国が圧倒的なプレゼンスを誇る。韓国領海内で中国漁船が韓国海軍との衝突事件をまた起こしたが、3カ国とはいっても北朝鮮とそれを支える中国、別の意味で敵対する日本にはさまれた韓国のプレゼンスはあまり強くはならないだろうという印象。朝日新聞などとはまた違った角度で歴史を検証しようとする立場には好意がもてるが、はたしてこの「すれ違い」の論争でどこまで新しい歴史観を開けるのかは疑問。

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