2010年12月29日水曜日

野村の授業(日本文芸社)

著者:橋上秀樹 出版社:日本文芸社 発行年:2010年 本体価格:743円
ヤクルト時代の橋上秀樹といえば土橋選手と並んで、手堅いバッティングとどこでも守れる守備を誇るユーティリティ・プレイヤーという印象が強かった。代打で起用されることもあれば外野の守備固めで起用されることもあったが、ヤクルトファンからすると手堅くいきたい場面ではムラのある選手よりも橋上選手がでてきたほうが安心…といった印象である。この本を読むと橋上氏が現役時代から相手投手の癖を見抜き、種々の野球戦術を勉強していたことがわかる。才能だけに頼らず、勉強に裏打ちされたユーティリティだったわけだ。身体能力は年齢とともに衰えるのはやむをえないが、知識は年齢をへると「つながり」をもって結晶化していく。結晶化された知識をさらに若い世代に伝えるという意味では、橋上氏がヘッドコーチには最適だったのだろう。データ重視の野球ではあっても「データの落とし穴にははまらない」という二段構えの戦術にのぞんでいるのがまた強い。精神力の強さと現場の変化におうじた柔軟性も必要となる。フィールドの選手にはなかなかそこまで判断する時間もないから、それを手助けしていたのが野村監督と橋上ヘッドコーチということだろう。「身だしなみや挨拶でソンすることはない」という合理的な考え方がやみくもに押し付けるよりも、若い選手にはついていきやすいリーダーシップといえるだろう。実学的に非常にやくだつ本。下手なビジネス本よりもずっと各種の「現場」で使える内容ではないだろうか。

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