2010年12月5日日曜日

パクス・ロマーナ 下巻(第16巻)(新潮社)

著者:塩野七生 出版社:新潮社 発行年:2004年(文庫版) 本体価格:362円(文庫版)
一種の統治の天才アウグストゥスの58歳から77歳までの人生後半期の描写。これまではカエサルをはじめとしてスキャンダルとはいっても政治の「核」の部分が不安定だったので、それほどのスキャンダルはない。が、帝政ローマ帝国のなかではまずアウグストゥスの政略結婚に利用されまくった娘ユリアのスキャンダルが発生する。また血の継承にこだわるアツグストゥスは、孫のrキウスとガイウスの二人を失い、ティベリウスを養子に迎える(ティベリウスは一時引退、その後復帰)。ティベリウスの実の父親はカエサルとポンペイウスの内乱時には元老院の側にたった人物だったが、そうした因縁は帝政ローマの時代では見事に遺恨を残さない人事が適用されている。ただしティベリウスがアウグストゥスの養子になると同時に、ティベリウスの養子として、アウグストゥスの弟の息子(甥っこ)であるゲルマニクスを迎えることになる。ローマ全軍の指揮権そのものはティベリウスは保有していなかったが、西方ゲルマニウム地方の征圧にゲルマニクスとともに向かうことになる。ゲルマニアでの戦いのなかでローマ帝国の防衛線はエルベ=ドナウではなく、ライン=ドナウに定着していく。そして紀元14年、カエサルが切り開いたローマの芽を見事に育てたアウグストゥスは77歳の人生を終える。

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