2010年12月20日月曜日

迷走する帝国(下)(第34巻)(新潮社)

著者:塩野七生 出版社:新潮社 発行年:2008年(文庫版) 本体価格:438円(文庫版)
世界史を教科書的にとらえるとだいたい「絶望感」が漂ってくる。偉大なるカエサルも最後には暗殺されたし、ナポレオンも島流し。アレキサンダー大王も最終的には「毒殺説」がいまだにある。ローマ帝国も結局崩壊してしまうのだが、「崩壊してしまう事例」ばっかりで、いまだなお成功100パーセントの事例というのは歴史にはなかなか残らない。どこかで「見切る」ってことも大事、というような刹那さが歴史にはあるのだが、未完成が人間の宿命と素直に考えることができるのも歴史の面白さか。ローマ帝国はアリエヌスの時代にガリア地方で分離独立したガリア帝国が誕生。さらにパルミラ地方に女性のリーダー、ゼノビアが誕生。その後ドナウ地方のイリリア出身の皇帝が数人続く。パルミア、とガリア地方の平定、ダキア地方の支配から撤退。皇帝アウレリアスという見事な人材を輩出するも落雷で死ぬ皇帝や謀殺される皇帝がやはり続く。支配する側と支配される側の奇妙な「距離の短縮化」がローマ帝国をさらに迷走へと導く…。

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